海岸線の美術館が宮城県雄勝町に防潮堤アート津波から人を守る壁地図

宮城県

2022年11月26日(土)に、宮城県石巻市、雄勝町で「海岸線の美術館」(Seawall Museum Ogatsu)が開館しました。

海沿いに続く美しい壁画、津波から人を守るために作られた防波堤に壁画を描いくという「アートプロジェクト」。

「景色が生まれる美術館」と称される野外美術館にどのような思いが込められ建設されることになったのか詳しい詳細をご紹介していきます。

海岸線の美術館とは?その思いと誕生秘話

風景が生まれる美術館と称される「海岸線の美術館」は、2011 年 3 月 11 日、東日本大震災発生後、人々の暮らしを津波から守る為に建設された巨大な防潮堤。

町の8割が壊滅、約4,000人いた人口は現在わずか1,000人ほどとなり、現在は65歳以上の方が57.11%( 令和 2年 3月 31 日現在 )という超高齢地域となっております。

海岸を囲うように建てられてた一本の線のような防潮堤は高さ約10m、全長なんと3.5kmという壮大な灰色の壁にアーティストが壁画を描いていくとくアートプロジェクト。

美しい自然と人の暮らしを遮る壁に絵を描くことで新しい風景と調和を生みだし過去と未来を繋ぐ場所に変えてくことを目的として作られました。

海岸線の美術館のコンセプト

 海岸線の美術館は、雄勝の海岸線沿いにある防潮堤建物などの屋外に芸術家が壁画作品を描き、
その美術作品が豊かな海や山と調和することで雄勝でしか
体験できない唯一無二の風景を生みだします。

今後も引き続き描かれていくという壁画ですが、各地区の海岸沿いを歩きながら屋外にも描かれた絵画などを一緒に鑑賞することができます。

雄勝の魅力を隅々まで堪能できる美術館になることを目指している」という思いとともに、雄勝の住民の方々の日常生活にも新たな色を与え、雄勝に来たことのない人たちにもこれを機に訪れるきっかけとなってくれること目指している。

震災から11年経った今日、この美術館が新しい未来に向かってたくさんの人が訪れ人口も増えていくというサイクルを生み出すきっかけになってくれるという強い期待も込められています。

その美しい青い海と緑深い山が作り出す海沿いの雄勝の町を美しい状態のまま守りたいという気持ちが伝わってきますね。

 

そんな思いから始められた防潮堤に壁画を描いていくというアートプロジェクト。

1本の線を引いたように佇む長く巨大な灰色の殺風景だった防潮堤に息を吹き込み新しい風景を生み出した、まさに「景色が生まれる美術館」が誕生しました。

海岸線の美術館館長の髙橋窓太郎氏の思い

館長の高橋さんは2019年に初めて雄勝町を訪れた時のことをこう語ります。

2019 年にはじめて雄勝に訪れてから早 3 年が経ちました。
毎月のように雄勝に行って、雄勝の住民のみなさんとお茶やお話しをしたり、
豊かな自然を見たり、海の幸を堪能したりと今では雄勝が第二の故郷です。
そしてこの雄勝の魅力をいろいろな人に知ってもらいたいと、
この 3 年間防潮堤をキャンバスに壁画を描き , 美術館にしていくという計画を進めてきました。

海岸線の美術館は、雄勝の防潮堤そして屋外のさまざまな建物にも壁画を描いてもらうので各地を巡りながら絵画を楽しむことができます。

さらに四季の移り変わりや時間帯によって作品の見え方が変わることも魅力の一つ、その度に新しい発見もあるのだそうです。

今後、年月を経て起こる色の変化なども見据えて作品の構想、色彩構成も行っていく予定。

土地との密接な作品を鑑賞することができる美術館です。

海岸線の美術館ステートメント

海岸線の美術館アクセス方法

海岸線の美術館 住所と地図

〒986-1336 宮城県石巻市雄勝町上雄勝2丁目22

JR仙台駅から車で1時間15分

JR仙石線石巻駅から車で40分

海岸線の美術館駐車場:みうら海産物店横空き地・住所と地図

〒986-0321 宮城県石巻市 桃生町新田字東町7−2

海岸線の美術館の開館時間

0:00〜24:00(野外美術館につきいつでもご覧いただけます。ご自由にご観覧ください)

 休館日 :年中無休

入館料 :無料

海岸線の美術館の見どころ

毎年制作され、壁画から壁画まで海岸線沿いを巡ることで雄勝の魅力を隅々まで味わえる地域一体型の設計。

海岸線美術館の壁画コンセプト・壁画制作アーティスト 安井鷹之介氏より

3年ほど、ほぼ毎日雄勝町に足を運んだという安井さんは雄勝の人の生活を実際に目にしてその日常のなんでもない行いの一つ一つに羨ましさを感じたと言います。

人々は土地を手入れして花を咲かせ、自分の住う家を手入れをして長く暮らせるようにする、そして魚をとるために道具を手入れし、文化と共存するために自然を手入れする。

「住まう人の”手入れ”によって営為が紡がれ、町に美しさを帯びている」

というところが好きになったという安井さんはそんな「自然を手入れし文化と共存する」雄勝の人たちの生活をのぞいてそのような ”手入れ” の姿を壁画の一番のテーマにして考えていると言います。

安井さんは「人が営み勤しむ美しい姿を匿名的に描きたいと考えている」

さらに、この土地に伝わる歴史に基づく風景なども書き足しながら「この地に密接して根付く壁画を作りたい、出来上がる壁画が ”手入れ” の中の一つになれればいい」と語っておられました。

海岸線美術館の作品紹介

雄勝の海の風景や、漁師の姿をモチーフに描かれた壁画はバックのや山並みと空が一体化し、さらに季節や時間によっても見え方が変わるという絵画はその日のその場所でしか見ることのできない鑑賞体験を味わうことができます。

1作目『THEORIA|テオリア』場所(アーティスト:安井鷹之介)

  • サイズ: 高さ7.5m×幅54.6m
  • 場所:宮城県石巻市雄勝町上雄勝2-22 みうら海産物店裏防潮堤
  • 制作期間:2022年9-11月

アーティストコメント

雄勝の浜の風景を一枚の絵にミックスさせた絵画。

左から、タ→昼→朝→夜と時間軸も混在。

作品名の「テオリア」はギリシア語で「観想」という意味。

この壁画を含む雄勝の雄大な風景を前に、視野の先にある没入と想像の時間を過ごしていただけることを願っています。

2作目『A Fisherman|漁師』場所(アーティスト:安井鷹之介)

  • サイズ:高さ7.5m×幅6.6m
  • 場所:宮城県石巻市雄勝町上雄勝2-22 みうら海産物店裏防潮堤
  • 制作期間:2022年11月

アーティストコメント

この作品は先頭にてロープを括る漁師さんの背中のワンシーン。

一切の無駄もなく彼らのたくましい手から繰り出されるロープワークは美しい。

シーズン中は休みなく毎日毎朝海に出て仕事をする、この瞬間からだけでもその膨大な時間の片鱗を想像することができました。

コレクション#1雄勝小・中学校壁画 highlight(アーティスト:安井鷹之介)

こちらは防潮堤ではなく2022年5月に完成された1作目の、雄勝小・中学校の壁画 で、”highlight” という作品です。

  • サイズ:5m×17m
  • こちらの作品は安井鷹之介氏と雄勝小・中学校 児童生徒 33 名が描いたものです。
  • 企画原案:雄勝小・中学校前校長 横江良伸
  • 制作期間:2022年5月

壁画のモチーフは震災時、旧雄勝中学校の校舎に唯一残った一本の桜の木『奇跡のさくら』です。

生徒とともに安井氏が共同で製作し、この桜のストーリーと当時の姿を校舎内の壁画を通じて後世に残していくというもの。

壁画制作に係るプロセスを通じて” 地元と母校に対する愛着をさらに深く根付かせてほしい” という願いがあり、奇跡の桜と自身を重ねて” 存在痕跡を残す” 作品となっています。

こちらは学校ですので、観覧に行く際は事前に連絡をしていく方がいいのかもしれませんね。

海岸線の美術館の今後2023年のスケジュール

※2023年度に制作予定の3作目に関して、クラウドファンディングを実施中です。
詳細はお問い合わせください。

  • 防潮堤 1 枚目の壁画定期コンディションチェック(春・秋)
  • クラウドファンディング(コミュニティ / 場所づくりの資金集め)
  • 2枚目壁画洗浄イベント(春・秋)
  • 3枚目の壁画制作

計画の日程変更等はありますが、以降 1 年に 1~2 枚ペースで壁画を制作予定。

海岸線の美術館メンバー

壁画制作アーティスト安井鷹之介氏

  • 愛知県出身。東京藝術大学彫刻科卒業。MAHO KUBOTA GALLERY所属。
  • ミケランジェロやロダンなどの古典から近代までを習得しさらに欧米の現代アートの潮流にも触れる。
  • 石膏と布で独自の手法を用いた彫刻で造形し注目を集め、さらにオリジナルのボリューム感のあるペインティングも手がける。
  • 彼の独特のセンスと幅の広い表現力が共感を呼んでいる。

海岸線の美術館館長・髙橋窓太郎氏

  • 東京都出身。東京藝術大学建築科卒業。
  • 大学で建築意匠設計を学んだ後、広告代理店勤務を経て、海岸線の美術館館長になった。
  • アートパブリックスペースの企画・運営やプロジェクトデザインも行っている。

海岸線の美術館・お問い合わせとSNS

 

ソース:PRTIMES

開館イベント・雄勝壁画まつり

2022年1126日(土)に「海岸線の美術館」の開館を記念し、『雄勝壁画まつり』が開催されました。

壁画の前で石巻の料理、音楽そして工芸品などを楽しみ、当日は東北ユースオーケストラによる「壁際演奏会」や奇妙礼太郎さんによる「海岸線のライブ」など他数々のプログラムも上演され、およそ1000人の方が訪れて賑わいました。

まとめ

シンプルな灰色の壁だけを建設するのでなく、雄勝町に纏わる人々の生活と自然の美しさを描いていく壁はより壮大で華やかで感動的です。

この素晴らしいアイデアにこの町に訪れる方も増えてくれるといい、そう願わずにはいられません。

是非一度本物を見に行ってみたいものです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました